Research: Flat Bottom Dripper Test (2025年版)

Research: Flat Bottom Dripper Test (2025年版)

先日のWave Filter Testに続いて、今度はフラットボトム(平底)ドリッパーの検証を行ったので、こちらの記事で簡単にその結果を残しておきます。

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目的

ハンドドリップにおけるコーヒー抽出の”レシピ”は大きく分けて以下の項目になるとされています。

  • ドリッパー: どのドリッパーを使うか
  • フィルター: どのフィルターを使うか
  • 抽出比率(レシオ): コーヒー豆と水の比率
  • 挽き目(メッシュ): 粉の細かさ
  • 注湯回数: 何回に分けてお湯を注ぐか
  • 注湯速度: お湯をどれくらいのスピードで注ぐか
  • 水温: どれくらいの温度のお湯を注ぐか
  • : 水道水を使うのか、浄水器を使うのか、どの銘柄のミネラルウォーターを使うのか、等

この内、ドリッパーを変えることで“抽出全体の速度”を調節することができるため、お湯を注いで落ちきるまでの速度を計測することで購入検討時の参考とすることを目的としています。

対象

先日のフィルター検証を行った後、改めて手持ちのフラットボトムドリッパーを確認すると5種類あったため、これら全てに対して同じ豆を用いた場合の抽出速度を検証しました。

項目

以下の項目・観点で検証を行っています。

  • size: ドリッパー(≒対応フィルター)の大きさ
    • L: Kalita Wave 185相当
    • S: Kalita Wave 155相当
  • bottom shape: ドリッパー底面の形状(穴の数と大きさ)
  • time: 以下のレシピで2回抽出した際の落ち切り平均時間(秒)
    • 豆: Leaves Coffee エチオピア Natural
    • フィルター: ORIGAMI Coffee Paper Filter Wave
      • ドリッパーの大きさに合わせて4cup/2cupを使い分けています
    • レシオ: 15g:240g(1:16)
    • メッシュ: Lagom mini 大ドット17
    • 30secおきに60g*4投
  • price: 国内定価を基準としたドリッパーの価格(単位: 日本円)
    • Solo Dripperについては海外通販になるため、8/31時点のレートでドリッパー単体+送料を算出しています

味覚に関する項目は一切検証の対象外としています。これは1人で検証しているため主観的な要素が強くなってしまうことと、体調によって感じ方が大きく変動しうることから参考に値しないと判断したためです。

また、抽出したコーヒーの定量的な観測をするのであればTDS計を用いるべきですが、こちらも所有していないため計測を実施していません。あくまでドリッパーの違いによる抽出時間への影響の傾向を掴むものとしてご活用ください。

結果

sizebottom shapetimeprice
April Plastic BrewerL1hole (15mm)1656,930
Beandy Silk DripperS1hole (※1)147.52,970
Kalita Wave 185L3hole (3mm)167.55,500
Kalita Wave Tsubame 155S3hole (4mm)1457,700
Solo DripperS1hole (30mm)137.5約10,465
(本体790Kč + 送料700Kč)

※1: 底面のリブを伝って中心1点から落ちていく形状になっています。
故に「1つ穴」ではあるものの穴の大きさは測定できません。

考察

  • Lサイズ(185相当)の2つは160秒台(2分後半)、Sサイズ(155相当)の3つは140秒前後(2分半未満)と大きさによって抽出時間が大きく分かれた
    • “ドリッパー底面の面積” と “ドリッパー側面の角度” が抽出時間と相関関係にある
    • ドリッパー底面の穴の数や大きさは抽出時間とある程度の相関関係があるが、ドリッパー自体の大きさよりは相関関係が少ない

まとめ

味覚およびTDS計を用いた測定を行っていないため、あくまで抽出時間のみの比較になりますが、考察にも記載の通りフラットボトムのドリッパーの中ではまず大きさによって傾向が異なることがわかりました。もしもフラットボトムのドリッパーを既に持っていて、何か買い足したい場合はサイズを変えると大きく変化しうる、ということがこの結果から言えるかと思います。

また、欲を言えばドリッパーの材質による温度変化の違いを測定できると尚良かったと思っています。「抽出中のドリッパー内の液温」や「抽出後のサーバー内の液温」を測定できると材質による温度変化の傾向を見ることができますが、ペーパーリンス時の水温やリンス後の時間経過、抽出前のサーバー温度等を揃えないと正確性を担保できないため、個人が限られた予算と設備でやるには些か苦しいところ。

ちなみに、検証結果との直接の関係性は少ないですが、フラットボトムのドリッパーを選ぶ際は使う豆の量(=淹れたいコーヒーの量)に合わせて選ぶのが良いでしょう。AprilやKalita Wave 185といった大きな底面積のドリッパーの場合、コーヒーベッド(粉の層)の厚みが薄くなり粉とお湯の接している時間が短くなってしまう傾向になるため、目安として20g以上の豆を使ってドリッパーの設計を活かしてあげたいところ。


というわけでフラットボトムドリッパーの比較検証でした。
今後も気が向いたら何らかの検証、行っていきたいと思います。