Project: ドリームバイクを作る Part1

Project: ドリームバイクを作る Part1

2022/04/26

ロードバイクに乗り始めた当初から抱いていた「いつかはオーダーフレーム」という憧れ。
その憧れに、もうすぐ手が届きそうです。

憧れの1台、ドリームバイクに向けて色々と進めている(筆が遅すぎてほとんど完成している)状況ですが、そのプロセスをいくつかの記事に分けてお届けしようかと考えています。

まずはその第1弾、着想〜ビルダー選定にフォーカスしてみます。

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オーダーフレームとは

まず、大前提として自転車(スポーツバイク)における「オーダーフレームとは」について簡単にご説明します。

「ハンドメイドフレーム」とも呼ばれるオーダーフレームですが、ざっくり言うと「大手メーカーの大量生産されるフレーム(マスプロダクツとも)」に対して、「小規模な工房で顧客の注文を受けて作成される手作りのフレーム」がオーダーフレームとなります。

紳士服に例えると、
丈や身幅等、ある程度決まった組み合わせから選ぶしかない大手スーツ店の吊るしのスーツ
に対して、
生地やデザイン、細かな寸法まで自分に合わせて仕立てるビスポークテーラーのオーダーメイドスーツ
みたいな存在です。

マスプロメーカーのフレームだとジオメトリやデザインは決められていてそこから選ぶ形になりますが、オーダーフレームの場合は全て自分の思い通りに作ってもらうことができる、というわけで拘りの強い方や吊るしのサイズが合わない方からの支持もあり、カーボンフレームが主流の現代においてもオーダーフレームへの憧れはあり「いつかはオーダーフレーム」という声もちらほら聞きますね。

任意の長さにチューブを加工して溶接できる、という特性から素材としてはスチールやチタンといった金属が主流ですが、一部カーボン製のフレームもあるようです。
※一般にマスプロメーカーのカーボンフレームは金型にカーボンシートを貼り付けて成形、というプロセスのためカスタムオーダーに不向きとされています。

クロモリフレームのシンプルで直線で構成されたデザインに惹かれてANCHORのRNC3を買った僕なので、スポーツ自転車に乗り始めた当初からオーダーフレームには憧れがあり、North America Handmade Bicycle Show(NAHBS)をはじめとした展示会のレポート写真等を毎日のように飽きもせず眺めていたりしました。

どんな自転車に乗りたいのか

ところでこのプロジェクトのそもそもの発端は2019年夏、RNC3をフラットバーに換装したことに始まりました。

以前ほどロードバイクに乗らなくなったので「脱ロードバイク」を掲げてフラットバーに換装したものの、頻繁に乗るようになったことからも「やっぱりドロップハンドルのロードバイク欲しい」という本末転倒なオチに。

一時期冷めていたオーダーフレームへの想いも再燃し、そろそろオーダーしてみようかな、ということで改めて欲しいロードバイクがどの様なものか改めて考えを整理することにしました。

検討当時(2019年秋冬〜2020年春頃)の市場の流れも考えると、以下の様な要件が見えてきました。

  • スチールフレーム
    • チタンにも興味はあるものの、「オーダーフレームは1本では終われない」という通説(ジオメトリをはじめとした仕様を煮詰めるのに複数本のオーダーが必要とも言います)や、価格帯を鑑みるとなかなか手が出ず、まずは比較的安価なスチールフレームから始めたい
  • カーボンフォーク
    • トラディショナルなスチールフォークの良さも捨てがたいものの、1インチヘッドのRNC3を持っていることも鑑み、キャラクターを変えるべくモダンなオーバーサイズのカーボンフォークを使いたい
  • リムブレーキ
    • プロのレースシーンでもディスクブレーキの利用率が高まり、マスプロメーカーやグループセット大手3社もディスクブレーキに主軸を置き始めた現状(2019年当時)、リムブレーキというシステムのこれ以上の大幅な性能向上は見込めず、今が最高峰かもしれない
      • 2021年に発表されたシマノのR9200系デュラエースがリムブレーキ用STIはワイヤレス非対応・ブレーキキャリパーはR9100系から変更なしで据え置きとなったことからも、この推測は当たっていた模様(?)
  • 非レーシングバイク
    • かつては「ロードレーサー」と呼ばれていたようにロードバイクはレースに起源があるものの、自分の乗り方・脚力からしてレーシングバイクというよりもファストツーリングに近いため、ジオメトリはそこまで追い込んだものにはしないものの、ファストツーリングとして最高のフレームにしてもらいたい
  • 国内ビルダー
    • NAHBSに出展しているような海外ビルダーにも興味はあったものの、細かい要望を伝えるコミュニケーションが取れるか不安があったため、国内ビルダー(可能であれば対面で要望を伝えられるビルダー)が望ましい
  • 個人ビルダー
    • 国内だとCHERUBIMさんや東洋フレームさん、海外だとIndependent Fabricationさんに代表されるように、いち企業として職人を抱えてハンドメイドフレームを作る工房もありますが(納期面では圧倒的に優位です)、個人的には一気通貫して一人のビルダーさんが制作に携わる形にロマンを感じているため

以上を踏まえ、
グランドツアラー的「クルマとして純粋かつ美しいフォルムを持つクーペ」の様なロードバイク
というコンセプトを元に検討していくこととしました。

Equilibrium Cycle Worksさんにご相談

緊急事態宣言が解除されていた(?)2020年9月某日、ビルダーがラトビア出身という珍しいEquilibrium Cycle Worksさんの工房を訪問してみました。

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Equilibrium Cycle Worksさんの工房にて

某カメラメーカー主催のトークショー等でビルダーの話を聞く機会はゼロではなかったものの、実際に工房を訪問するのはこれが初めて。

工房内の“インターネットで見たことはあるけど見慣れない風景”に興味津々になりながら、まずはフレームを試乗。

E1 Disc試乗車

試したのはこちらの写真にある”E1 Disc”というスチールフレームと、(写真がなく申し訳ないですが)チタン製のディスクブレーキフレーム。

走りに不安なところはなく、またディスクブレーキ化による重さも感じず今のバイクよりも安定感がありつつもキビキビ走るなぁ(恐らくヘッド〜フォークにかけてのフロント周りの剛性感に起因すると思います)、という印象でした。

オーダーベースはE1に決定

実は過去のハンドメイドバイシクル展での出展や、訪問前のメールのやり取りで内心ほぼほぼEquilibriumさんに決めていたので最後の答え合わせとして訪問した形にはなりましたが、前述の要件とvladさんのカウンセリングを受けE1というストックフレームをベースに制作してもらうことになりました。

E1 | EQUILIBRIUM CYCLES

www.equilibriumcycleworks.com

Equilibriumさんでは「カスタム」と所謂パターンオーダーに近い「ストック」(といっても吊るしでストック=在庫があるわけではなく、オーダーを受けての受注生産)の2種類のオーダー方式がありE1は後者に当たります。

実際にカウンセリングを受けて作ってもらったジオメトリ表

レーシング/オールラウンダーという2種類のジオメトリが用意されており、用途に合わせて選択するようになっているのですが、もちろん「オールラウンダー」でお願いしました。


というわけでPart1では(プロセスの記述があまりにもざっくりとしていますが)ビルダー選定までまとめてみました。

次回はパーツ選定とカラーリングについて触れていきたいと思います。